harmo株式会社が展開している電子おくすり手帳サービス「harmoおくすり手帳」は、三和運輸機工株式会社と健康起因事故を予防する取り組みを開始します。この取り組みは、運転を職業とされる方が、病気や薬と正しく付き合う仕組みを作ることを目指しています。
今回の取り組みでは、harmoおくすり手帳アプリを導入した三和運輸機工株式会社の乗務員の方・事業者双方へ、薬や疾患による健康起因事故を防ぐためのサービスを提供します。
そこで、三和運輸機工株式会社 常務取締役管理本部長 中山 学様と、harmo株式会社 代表取締役 Co-CEO 兼 事業開発本部 本部長 山東 崇紀が今回の取り組みへの想いや必要性について対談を行いました。
山東
今回の取り組みについての意見をお聞かせください。ドライバーの事故の可能性や、それに対する対策などはされていますか?
中山様
ドライバーの仕事は、運転が始まってから終わるまで、基本的に個人で行動することになります。私たちの会社では、様々な安全運転のための啓発活動や教育に力を入れていますが、事故を防ぐためにはドライバー個人の行動が不可欠です。実際、ブレーキを踏むべき場面で踏み損ねてしまったり、ハンドルを適切に操作できなかったり、車体を擦ってしまうなどの事故は、誰にでも発生する可能性があるのです。
例えば、事故の原因が脳卒中などの健康問題による場合なら、私でも理解はしやすいです。しかし、医療や薬について詳しくない一般の人々にとって、事故に薬が影響していると考えるのはわかりづらくて難しいんです。山東さんから、今回の取り組みについてのお話しを聞いたとき、この課題に焦点を当て、ドライバーの方の薬の管理について考える必要性を感じて目を向けなければいけないと思いました。
山東
中山様がおっしゃる通り、薬は遠い存在にある方も多いと思います。薬を適切に使用しないことによって症状が悪化し、事故に繋がってしまうケースが論文などでも散見されています。例えば、糖尿病を患っている人が、朝食を食べずに薬を飲んでしまい、低血糖の症状を起こしてしまうことがあります。あるいはその薬を適切に飲まないがゆえに症状が進行して、高血圧によって脳卒中を引き起こしてしまうケースも見受けられます。
薬は病気を管理するために飲んでいますが、副作用も含めて個人で適切に管理する必要があります。しかし患者さんにとって、意識を高く保ち続けながら薬を飲むことは難しいのも事実です。そのギャップを埋めていく作業がとても重要だと思っています。また、薬を飲んでいる方だけでなく、そうでない方も安全に就労を続けられるような状態にしていく、こういったロールモデルを日本で作っていく必要があると感じていて、「病気になる前から予防する、病気になっても正しく付き合う」という意識づけから取り組んでいきたいです。しっかりと我々のようなヘルスケアを提供するような会社がタッグを組み、ロールモデルを作っていかないといけないと思っています。
中山様
私は薬の分野に詳しくないので、薬のデータがどのような傾向を示すか、楽しみと同時に不安も感じています。
今までは、病院での領収書や精密検査の診断書は会社が管理していましたが、その後の治療や薬を処方された後に飲んでいるかなどのフォローアップはできていませんでした。
例えば、私の場合、高血圧で病院へ行き90日分薬をもらいます。しかし、半年(約180日)も病院に行っていないとすると、薬が切れているということですよね。つまり薬をちゃんと飲んでいない。そんな風に私たちでも社員の薬の状況を把握できるようにする必要があると考えていました。
山東
中山様の仰る通り、現状は残念ながら薬を正しく飲めている人よりも、飲めていない人の方が多いという実情があります。そのためサポートが非常に重要です。サポートをするときに、ドライバーさんにとって負担をかけない方法を考えることが、今後我々のような事業者が考えていくところです。
harmoのシステムを導入することによって、何か期待していただけることはありますか?
中山様
薬に関する情報は私たちには理解しづらいものです。例えば、複数の病院で診察を受ける際に異なる医師から、異なる薬が処方されることがありますが、医師間では情報の連携ができていないことが起きており、唯一の接点がお薬手帳になります。「医師に言われたから飲んでいる」という感覚に頼るだけでなく、システム上で指導してくれたり、この薬は飲み合わせが悪いなど、注意点があればシステムを通して教えていただける仕組みが将来的にできたらいいなと思います。
山東
システムを導入した後、ドライバーさんたちに対してどのようになってほしいですか?たとえば、事故を減少させるための取り組みや、ドライバーさんの健康と仕事の質を向上させるために望む姿勢はありますか?
中山様
大きくわけて二つあります。
一つ目はドライバーが安全に長く働いてほしいと思っています。昨今、ドライバーの人材不足が問題視されています。特に我々のような鋼材を専門に扱っている業者は運送会社全体の中で見てもごく一部で、ドライバーの仕事は運転だけでなく、荷物の積み付けや荷卸しなど、その荷扱いをする作業に知識や経験がないとできないんです。ある意味、職人的なものなんです。そのため、健康管理をすることでドライバーにとって安全に長く働きやすい環境を創りたいと考えています。
二つ目は事故防止のためです。事故は絶対に避けなければならないものです。事故を予防するために、システムを通して、薬を適切に飲めているかを把握しておくことで、運転中、急に意識を失うなどの状況がないようにしたいです。健康診断までは確認していましたが、その後の薬の管理まで十分な取り組みが行われていませんでした。そこを今後はharmoの皆さんと協力して、健康と薬の管理に関する必要な仕組みを作っていけたらいいなと思います。
山東
人生において、病院に行く時間はたったの2%しかないという話があるそうです。このわずかな時間で医療従事者は患者さんに、病気や治療との向き合い方を伝えてくれますが、医療の情報は難しい。完全に理解することは難しく、例えばその人の仕事や生活を加味して、その人らしい人生をどのように過ごすかといった指導やケアには限界があると思うんです。それでも、医療従事者は患者さんのために一生懸命尽くしています。多くの患者さんを診察するために1人あたりに割り当てられる時間は長くても5分から10分程度しかありません。そのため、日常生活の他の側面をharmoを通じてサポートし、患者さんの生活の質を向上したいと考えています。
また、薬の種類は2万種類を超えています。治療の選択肢が数多く出てきて、使いやすい薬も増えましたが、2万種類もあるということは医者ですら把握できない薬もあるかもしれません。複数の医療機関で処方された薬をあわせて見たときに、薬の相互作用なども複雑になっています。そのため、私たちがharmoのシステムを構築して、薬の安全な管理をできるようにし、ドライバーの健康関連の事故を防ぐために取り組んでいます。
ドライバーの健康に起因する重大な事故や、最悪の場合、命を失う事故が発生しないよう、日々の薬の情報や副作用情報をharmoで管理しながら、安全かつ健康に長く働ける環境を作り上げることを目指しています。
さいごに
対談ありがとうございました。健康起因事故を予防するための活動は非常に意義があると感じました。この取り組みは、ドライバーの皆さまに安全かつ健康に長く働ける環境を作る第一歩として、薬の適切な管理を支援するものです。
安全に運転をするためにはドライバー個人の行動が重要であり、事故予防には薬の適切な管理が必要だと感じました。しかし、健康問題や薬の影響については、一般の人々には理解しにくいことがあるため、harmoのシステムを通してサポートしていく予定です。
ドライバーの皆さまの健康と、長期で働ける環境を目指して、取り組んでいきます。