WILLER EXPRESS株式会社 管理本部 保健師 原田リエ 様
安全運行を最優先事項とするWILLER EXPRESS株式会社。同社では、「健康起因事故を起こしたくない」という思いのもと、独自の管理体制を構築してきました。 同社がなぜ服薬管理システムharmo(ハルモ)を導入したのか。そして、導入によって現場の意識はどう変わったのか。管理本部 保健師の原田様にお話を伺いました。
本インタビュー記事は、全3回のシリーズでお届けします。
第2回目は、検査後の具体的なフォロー体制についてお聞きしました。
【harmo導入インタビュー】WILLER EXPRESS株式会社 #02 検査で終わらせない。所見を「確実に」安全につなげるために
最終回では、harmo導入に至った背景と、その効果を伺います。
#03 harmo導入で変わったこと。業務を軽くし、現場の不安をほどき、面談の質を上げる
───harmo導入前は、どのように通院・服薬確認を行っていたのでしょうか?
harmo導入前は、該当のハイウェイパイロットから「薬剤情報提供書(お薬情報)」などを提出してもらい、それを確認するという運用でした。
なぜ薬剤の情報を確認したいのかというと、処方内容を見ることで、その方が今どの治療フェーズにいるのかを推測できるためです。例えば、インスリンが処方されているのか、あるいは薬の用量が5mgなのか10mgなのか。そういった違いにより治療状況を把握できるということを、各営業所の健康管理担当者にも説明し、提出の協力を仰いでいました。

───通院状況のみならず、処方内容も確認されていたのですね。運用において課題だったことはありましたか?
各営業所の担当者が該当者に声をかけ、次回の出勤時に提出してもらい、それをPDF化して私に共有する、という一連の流れのため、どうしても手間はかかっていました。
また、処方内容の確認においても、中には、どのような薬か調べないとわからないものもあります。そのため、薬剤名を検索し、添付文書を見て、「どういう目的の薬か」ということを一つひとつ調べていました。
───harmoを導入されて、運用はどのように変わりましたか?
まず、担当者は通院や服薬の確認がすごく楽になっていると思います。毎回の声かけと書類回収が不要となり、システムを見れば本人が「病院に行った」ということが分かります。
私が特に楽になったと感じているのは、「運転禁止薬」の確認です。これまでももちろん確認を行っていましたが、例えば「腰が痛い」などで受診した際、たくさん飲んでいる薬の中に1つだけ運転禁止薬が含まれていても、パッとは気がつきにくいことがあります。ジェネリック医薬品などで馴染みの薄い名称の薬であっても、「運転禁止薬」としてシステムにアラート表示されるようになったのは、本当に助かります。

ハイウェイパイロットにとっても、これまではシールのお薬手帳で管理していたものがアプリに変わり、便利になったという声も聞きます。最初は導入のハードルがありますが、それを乗り越えれば「楽になった」と感じてもらえる点は良かったと思います。 ただ、これらのメリットを感じられるのも、アプリの目的をその都度ハイウェイパイロットに説明し、登録していただくまでの担当者の努力があってのことなので、感謝しています。
───管理面のみならず、ハイウェイパイロットの方にも便利になったと感じていただけて嬉しく思います。一方で、導入当初、ハイウェイパイロットの反応はいかがでしたか。
導入当初、ハイウェイパイロットの中には、「薬のことで乗務禁止になるんじゃないか」という警戒感を持つ方もいました。
この不安を解消するために大切にしていたのは、「即乗務停止にはしない」という姿勢です。もし運転禁止薬が出た場合でも、まずは面談を行い、本人と相談します。病状や状況によっては、今は乗務より治療を優先した方が本人にとって良いケースもありますし、安全のために主治医と相談して別の処方に変更する方法もある、と本人と相談するケースもあります。そうやって対話を重ねることで、「即運転禁止なわけではないんだ」ということが伝わり、受け入れる人が多くなったと思います。
───“禁止”ではなく“対話”で、受容が進んだのですね。現在は、ハイウェイパイロットにはharmoがどのように受け止められているのでしょうか。
例えば私がハイウェイパイロットに対して、「いつも登録ありがとうね」「見てますよ」「この間こんなんだったね」といった声をかけると、「そうなんだよ」と話が続きます。わざわざ言葉にして言われることはないものの、「会社が見守ってくれている」という気持ちになっている方もいらっしゃるのではないかと思っています。
また、今まででは、例えば「A営業所の○○さんがインフルエンザに罹患して1週間休んでいる」といった情報は、本社にいる私は届いてきませんでした。harmo導入後は、アプリへの登録を通じて、リアルタイムに治療内容が届き、ハイウェイパイロットの状況が把握できるようになりました。それにより、「この前はインフルエンザの症状、大丈夫でしたか?」といった会話が生まれ、コミュニケーションが変化しています。

───コミュニケーションや面談の質を高めるためのツールとしても活用いただけているのですね。面談での活用において、印象に残っているエピソードはありますか?
導入してすぐに直面したのが、半減期(成分が体内に残る時間)が長い睡眠薬が処方されていたケースです。本人は主治医に「自分は運転手です」と伝えたうえで処方されていたため、当初は「主治医に伝えているのに、なぜ会社から言われるのか」という反応でした。
そこで私は、睡眠薬の種類ごとに半減期がどれくらい違うかを示した比較表を作成し、改めて説明を行いました。「主治医の先生の判断を尊重するのであれば、診断書が必要です」と伝えたところ、本人も納得し、自ら主治医に相談して別の薬に変更することになりました。
───最後に、導入を検討している企業へメッセージをお願いします。
管理者側として、情報を知ってしまったら無視はできませんし、手間やプライバシーへの懸念もあると思います。しかし、少しでも事故への心配があるのであれば、いざ事故が起きてしまったときに「あのときやっておけば」という後悔は、避けたいのではないでしょうか。知ってしまったら対応しなければならない、というのは薬に限らず、この業界の恐怖かもしれませんが、「対応方法があるのなら、できる限りのことをする」という姿勢が大切であると感じています。
また、導入が怖いと感じるのは、「知ってしまった時の対処法」を知らないからかもしれません。主治医に診断書を書いてもらう、あるいは産業医からお手紙を書いてもらって薬の変更を相談するといった具体的な対処法が分かっていれば、その怖さを抜け出せる道があると思います。
ただし、ツールを入れればすべて解決するという話ではなく、経営陣や各事業所の所長が「この仕組みで管理していくんだ」という強い思いを持ち、発信することが不可欠です。
まずは心配事を一度置いて、ぜひ一歩踏み出してみてほしいと思います。知ることを恐れるフェーズから抜け出して、1つ1つに対応し、足跡を残していくことが、安全な世の中に一歩近づくことに繋がるのではないかと思います。
インタビュー後記
今回の取材で伝わってきたのは、事故を防ぐために「知って、対処し、記録を残す」という覚悟でした。受診勧奨で終わらせず、費用負担や診断書提出、通院・服薬・CPAP確認まで含めて安全に繋げる——その徹底が、現場の習慣と信頼を生んでいることを実感しました。
また、そうした運用を支える基盤として、harmo を、通院確認の証明から運転禁止薬の見落とし防止、さらにはコミュニケーションの向上まで、丁寧に活用いただいていることに深く感謝申し上げます。ご協力いただいた原田様、ならびに関係者の皆様に、心より御礼申し上げます。
<インタビュー協力企業>
会社名:WILLER EXPRESS株式会社
事業内容:高速バス「WILLER EXPRESS」の統括管理
ホームページ:https://www.willerexpress.co.jp/
◇harmoおくすり手帳 for Driverについて
harmo株式会社は、医療分野で培った専門知識を活かし、運輸業界が抱える健康課題の解決に寄り添います。harmoおくすり手帳 for Driverは、おくすり手帳アプリを通じて、ドライバーの服薬・治療状況を把握することで、健康起因事故の防止を目指すサービスです。服薬忘れや治療中断、眠気などの副作用によるリスクを防ぎ、治療と運転業務との両立をサポートします。
サービスサイト:https://www.harmo.biz/well-harmo/
