スマートフォンサイトはこちら

一般のお客様・患者様へ  > harmoニュース > 災害時のお薬手帳の意義について ~東日本大震災時の支援活動に学ぶ

メディア2015/3/11

災害時のお薬手帳の意義について
~東日本大震災時の支援活動に学ぶ

(今回の記事は、川崎市薬剤師会の会報誌に掲載された内容を転載しております。)

「もう、これで風邪をひいてもいいんだね」との言葉に
避難者の医療、医薬品への切実な思いが胸に迫りました。

川崎市薬剤師会 座談会
2011年3月11日に発生した東日本大震災では、地震、津波による被害で医療機関や薬局等も甚大な被害を受けました。医療インフラが断たれ、カルテや薬歴などの情報が失われたなか、お薬手帳の活用により、適切な医薬品の供給と、医療が提供される事例が多くみられました。
災害時におけるお薬手帳の活用実態について、実際に現地で震災支援活動に携わられた川崎市薬剤師会の先生方にお話を伺いました。

川崎市薬剤師会の皆さん
  • 嶋会長:しま薬局
  • 伊藤理事:有馬センター薬局
  • 金子先生:ミツワ薬局

東日本大震災時の被災地支援活動について

嶋:薬剤師のボランティア活動については、日本薬剤師会がある程度地域を決めていて、神奈川の場合は福島でした。ボランティアの募集を呼びかけたところ、金子先生たちが名乗り出てくださいました。実際にスタートしたのが4月初めで、6月の終わりまで活動。4人ずつくらいのチームが交代で、のべ500名ほど参加しました。

金子:私は3回現地に行きました。行くのは体育館や公民館。1日で何カ所も回りました。

嶋:私は最初に現地視察に行き、あとは窓口として、現地に行っている人の情報を取りまとめていました。現地では、薬剤師はドクターと看護師と一緒になり、「医療チーム」として動きます。私が行ったときは慈恵医大のチームに入って、薬は慈恵医大からドクターが持って来ていました。

Q 1日に何人くらい診られたのですか。

金子:避難所の規模によりますが、少ないところなら何十人、何千人単位のところもありました。3班か4班で、2日かけて全地域を回ります。多い時には1日に300人くらいの患者さんの処方箋を書く手伝いをしました。ドクターは普段パソコンで処方箋を書くので、手書きになるとわからないと言われたのです。我々が処方箋を書かないと先生の診察が進まないので、手書きの処方箋を書くのを手伝うことがありました。

Q 避難所で印象に残ったことはありますか。

金子:最初に避難所へ行った時、おばあちゃんに「来てくれてありがとう。私たちはこのまま見捨てられると思っていた」と言われました。「もう、これで風邪をひいてもいいんだね」という言葉が心に深く残っています。お年寄りは普段からいろいろな薬を飲まれている方が多いのですが、着の身着のままで逃げて、血糖値がすごく高くなっている方がたくさんおられました。本当に薬がないと生きていけない。とくに高齢者にとっての薬の重要性を再認識させられました。

Q 被災地や避難所は最初どういう状態でしたか。

金子:本当に何もない状態です。ボールペンくらいは自分で持って行きましたが、はさみもない、袋もない。薬の説明を書きたくても、紙すらない。輪ゴムもないから、薬もバラのまま渡していました。体育館のフロアには避難している方がおられるので、ステージの上で診察をしました。といっても、パーテーションもなく、椅子と机を持って来ただけです。処方箋も廊下に這いつくばって、袋を並べて手書きしていました。

Q 具体的な活動はどういうものですか。

金子:できることは何でもやりました。たとえば廃校になった幼稚園や学校、体育館が避難所になるので、そこの環境整備から始めました。割れた窓ガラスを新聞紙でふさいだり、トイレにペーパーやハンドソープを置いたりしました。

Q 患者さんの状態はどんな傾向でしたか。

金子:最初は血圧や糖尿病の薬など、普段飲んでいる薬がないという方が主に来られ、ひと通り落ち着いてくると「風邪をひいた」という患者さんが来られました。

Q 避難所でお薬手帳を持っている方はおられましたか。

金子:あれだけの地震と津波が来たら、逃げるのに必死でわざわざお薬手帳を取りに帰りませんよね。だから最初の頃はお薬手帳も何も持っておられない方が多かったです。
初日にメンタル系の患者さんと、てんかんの患者さんの2人が白い粉薬を持って来られ、「もう薬がなくなるから、何とかしてほしい」と言われました。同行した薬剤師と「何種類かが一緒に入っているようだけど、名前もわからない、どうしよう」と困り果てました。行政の方と相談しているうちに、レセプトを取り寄せてもらうことに気づいて、どの薬が何グラムとわかりました。
避難所では「あそこの薬局、病院にかかっているからそこに聞いてくれ」という問い合わせが多かったのですが、みんな避難して、誰もいない。聞きようすらありませんでした。

Q 途中からお薬手帳を持参される方が増えてきたのですか?

金子:我々が1人ずつ手書きをして、お薬手帳を配りました。最初は単なるメモ用紙程度のものでしたが、「お薬手帳があると便利だ」ということに気づいて、各県からお薬手帳を送ってもらい、配ることができました。いろいろな県の手帳が届きました。
状況が少し落ち着いてくると、避難所の中で「どこの避難所がいい」とか「あそこは炊き出しが出るよ」といった情報が出回り、避難者が移動するのです。移動のたびにカルテを取り寄せることはできないので、とりあえず自分の薬は自分で管理してもらうよう「お薬手帳は全員持っていて欲しい」とお声をかけ渡しました。

嶋:私が行ったのは原発の近くで、津波の被害はありませんでした。多少は物を持って避難できたので、お薬手帳を持っている方もおられました。

Q 現地でお薬手帳を持っている方と持っていない方の差はありましたか。

金子:先生が診察する時に「前回はどんな薬を飲んだのか」と確認するのにお薬手帳は一番いいツールでしょうね。避難者が移動するたびにカルテを取り寄せることはできませんから、カルテ代わりです。
被災地では薬の数が圧倒的に足りません。血圧の薬でも普段飲んでいるものはないが、似たものはある、という状況です。例えば、ジェネリックが届いていたとしても、先発品を飲んでいる方にはその薬がいいわけです。お薬手帳を持っている方は、どんな薬を飲んでいるのかがすぐにわかるため、診察しやすくなります。

Q 医療関係者にとってのメリットは、明確に何を飲んでいたか、どういう治療を受けていたかがわかることですね。

金子:たとえば先発品を飲んでいて、次に来た医療チームがジェネリックしかなかったから、ジェネリックに変えたという場合もある。成分が同じならいいでしょうが、似たような薬なら効き方が変わるかもしれません。「Aの薬なら安定したが、Bはちょっと安定しない。ではCに変えてみよう」と、先生の中でもある程度選択肢を絞ることができます。

Q お薬手帳に対する患者さんの感想は?

金子:普段は、薬情で薬の写真が入っています。でも被災地では全部手書きです。この薬がこの薬がいつのものかも わからなくなる。でもお薬手帳があれば、何日分残っていて、どういう飲み方をして、何の薬かが記録されていますから、患者さん側も重宝していたと思います。

Q 災害時に紙のお薬手帳の課題は何だと思われますか。

金子:まず、紙のお薬手帳を持って避難する方は、ほとんどいなかったということです。とくに外出先から避難しなければならないときに、わざわざ家までお薬手帳を取りに帰らない。

嶋会長
嶋会長

金子先生
金子先生
























































金子先生

  • 前へ
  • 1
  • 2
  • 次へ